数年前から「リビング学習」が注目を集めています。宿題や勉強を自分の部屋ではなく、リビングで行うことには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
親から適度な距離で勉強することで、子どもの学力は高まる
自宅で勉強することに慣れていない子どもは、親から適度な距離で勉強する必要があります。というのも、親が勉強をすぐ隣で観察していると、子どもはプレッシャーを感じ、ただ早く答えを出すことを目的としてしまい、じっくり考えることをしなくなりがちです。しかし、親の目が届かない「子ども部屋」などで勉強させると、わからないことが出てきたときにそこで行き詰まり、あきらめて勉強をやめてしまいます。
子どもがリビングで勉強する姿を台所などから何となく気にしながら見守り、質問があればヒントを出してあげる。そのような適度な距離感を保つことで、子どもの学力が高まりやすくなります。成績の良い子たちに「どこで勉強しているか」を尋ねると、多くの場合、「リビングで勉強している」という答えが返ってきます。
リビングでの勉強が習慣になれば、子どもの学力はどんどん高まっていきます。子どもにとって親と向き合って勉強するのは気が引けてしまいますし、親としても忙しいなか、子どもの横で勉強を見る時間を取ることは難しいことでしょう。かといって、自分の部屋で勉強するように言い聞かせても、勉強慣れしていない子どもは、徒労感から面倒になって長続きしないものです。リビングで勉強させることで、子どもは親に自分のがんばりを見てもらっているという満足感を味わうことができます。
親も、子ども部屋で机の横について勉強を見る必要はなく、台所やリビングで家事を進めることができるので一石二鳥です。
リビング学習を習慣化させるコツはレイアウトと親の働きかけ
リビング学習のコツは、子どもが勉強に集中しやすくなるための環境を整えることです。理想としては、ダイニングテーブル・イスとは別に、勉強用の机とイスを用意しましょう。ダイニングテーブルのイスは大人用に作られているので、子どもでは足が床に届かずに姿勢が安定しなかったり、前かがみになってしまったりします。また、ダイニングテーブルと勉強机を別にすることで、食卓の準備の妨げにならないというメリットもあります。
なお、勉強机はできれば窓に向けましょう。親の動きが目に入らないようにした方が勉強に集中しやすいですし、気分転換に外の景色を見ることもできます。
そして、リビング学習を習慣づけるには、子どもに対する親の働きかけも大切です。気をつけたいのは、注意しない、叱らないようにすることです。子どもに否定的な言葉を投げかけるほど、子どもは自分の部屋に閉じこもりがちになります。注意したり叱りたくなったりしたら、「こうすると、もっと良くなるよ」というように、肯定的な言い回しで伝えると、子どもも親の言うことを素直に受け入れやすくなるでしょう。
また、子どもから質問を受けて、すぐに答えを教えてしまうことはおすすめできません。答えを知った瞬間に、子どもはその問題に対する興味を失ってしまうからです。クイズがおもしろいのは、その答えがわからないから。子どもが質問してきたら、知的好奇心を引き出すチャンスです。ヒントを与えたり、答えの調べ方を教えたりすることで、子どもの興味関心をさらに引き出すことができます。
リビング学習では、勉強を始めるまでの取りかかりが早くなる
勉強ができる子どもの共通点に、勉強を始めるまでの取りかかりの早さがあげられます。リビング学習では、親の目が届くため、子どもは他のことに気を取られず、すぐに勉強に取りかかりやすくなります。
子どもができるだけ勉強しやすいリビングになるように、ぜひレイアウトを工夫してみてください。
この記事を書いた人
西村創
受験指導、塾の選び方と活用法の専門家
学生時代からさまざまな形態の塾で講師経験を積む。大学卒業後、大手進学塾、予備校講師を務め、国内外の教え子は2,000人を超える。その指導法には定評があり、テレビや新聞、教育系雑誌などのメディアから度々取材を受ける。出版著書の多くが話題を呼んで重版となり、全国各地の学校からの依頼に応じて講演講師も務めている。
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