これまで住宅ローンは一家の大黒柱、つまりほとんどの場合、夫名義で利用することが一般的でした。しかし、女性の社会進出が著しく、夫婦共働き家庭が珍しくなくなった今、夫婦2人の名義で住宅ローンを組み、マンションを購入する家庭も増えてきています。
そこで今回は、夫婦2人で住宅ローンを組むメリットと注意点を見ていきましょう。
共働き夫婦が住宅ローンを組む4つのパターン
共働きの家庭で住宅ローンを組むとき、一般的に4つの選択肢があります。今回は「夫の方が収入が高い」と仮定します。
1. 単独ローン(夫が住宅ローンの契約をする)
・返済義務:夫のみ(ただし相続が発生した場合に返済義務が生じる可能性あり)
・住宅ローン控除:夫のみ
・団信:夫のみ
・登記:夫
2. 連帯保証(妻の収入を合算し、夫1人が住宅ローンの契約をする)
・返済義務:夫だけでなく妻にも支払い義務あり(金融機関はどちらに請求しても良い)
・住宅ローン控除:夫のみ
・団信:夫のみ
・登記:夫
3. 連帯債務(夫がメインの契約者となり、2人の収入を合算して2人で住宅ローンを借りる)
・返済義務:夫と妻に同様に支払い義務あり(2人のローン)
・住宅ローン控除:夫と妻
・団信:夫のみ(金融機関によっては割合を定められる場合あり。なお、連帯債務の場合、金融機関によりさまざまな団信の形態があります。利用する金融機関にお問い合わせください)
・登記:返済負担割合に応じて
4. ペアローン(夫婦それぞれが住宅ローンの契約をする)
・返済義務:基本的にはそれぞれ契約したローンを支払うが、互いに連帯保証人となる
・住宅ローン控除:夫と妻
・団信:夫と妻それぞれ契約した金額分に加入(夫にもしものことがあった場合、夫が契約した分の住宅ローンはゼロになる。妻の場合も同様)
・登記:ローンの割合に応じて
※住宅ローン控除:住宅ローンを組んでから10年間、年末のローン残高の1%が税金から控除される(諸条件あり)
※団信:住宅ローン返済中に、契約者にもしものことがあった場合、住宅ローン残高がゼロになる保険(一般的に金融機関が保険料を負担するケースが多い)
※不動産登記の持分割合:一般的には住宅購入資金の負担割合に応じて登記。妻が資金を準備したにもかかわらず、夫だけの名義で登記をすると、金額によっては贈与税がかかる可能性あり。
「単独ローン」「連帯保障」「連帯債務」「ペアローン」それぞれの特徴
「単独ローン」は、夫婦いずれかの一方の収入だけで希望額を借りられるのであれば、最もシンプルでわかりやすいでしょう。ただし、収入によっては借入可能額が少なくなる可能性もあります。
そんなときは、もう一方の収入を合算して契約する「連帯保障」や「連帯債務」で住宅ローンを組めば、借入可能額が増えるかもしれません。しかし、妻にもしものことがあった場合、返済が困難になることも予想されるため保険などで備えておくことは必要です。
また、夫婦ともに同程度の収入がある場合は「単独ローン」「連帯保証」「連帯債務」だと、住宅ローンの契約者ではない方には住宅ローン控除が適用されない、ということもデメリットと言えるかもしれません。
一方、「ペアローン」は、住宅ローン控除・団信ともに夫婦両方が利用できますが、住宅ローンを2つ契約することになるため、金融機関の手数料の他、登記費用などもダブルでかかってしまいます。費用面においては他と比べるとデメリットが大きいと言わざるを得ません。そして、夫にもしものことがあった場合、夫の住宅ローンはゼロになるものの、妻の住宅ローンの返済義務は続きます。
その他、残念ながら離婚してしまうことになった場合、2人でローンを組んで共同名義にしていると、どちらか一方の名義にするのが難しかったり、売却などの手続きがスムーズに行えなかったり、状況によっては相続問題に発展する可能性も考えられます。
住宅ローンを組む際は、今後の夫婦の収入を試算して検討を!
夫婦どちらか一方の収入が大きく、希望額を借りられるのであれば、収入が高い方の名義で「単独ローン」を契約した方がわかりやすいでしょう。「連帯保証」は、どちらか一方の収入では少しだけ希望額に足りないときには有効です。
反対に、同程度の収入があり、出産後も仕事を続けられる環境であれば、「連帯債務」や「ペアローン」で住宅ローン控除を受けた方が、金銭的なメリットを期待できます。ただし、夫婦2人ともが住宅ローンの審査に通る必要があるため要注意。
住宅ローンを組む際は、今後の夫婦の収入を試算して検討するようにしましょう。
この記事を書いた人
佐々木茂樹
ファイナンシャルプランナー
1968年、北海道旭川市生まれ。1986年に旭川北高校を卒業、旭川市内の老舗ホテルに勤務。1988年より道内の郵便局に転職、郵便・貯金・保険業務を経験。在局した17年間のうち10年間保険業務に携わり、その間にAFP、2級FP技能士資格を取得。2006年より、三井住友海上きらめき生命でファイナンシャルコンサルタントとして勤務。2011年、同社を退職し、ファイナンシャルサービス株式会社を設立。
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