住宅ローン返済者の死亡後の生活を支える生命保険(1)逓減定期保険・収入保障保険
住宅ローンを借りる際、住宅ローン返済者に万が一のことがあった場合の備えとして「団体信用生命保険」に加入します。そのため、もしものときも遺族は住宅ローンの支払いを心配することなく、その後の生活を営むことができます。しかし、住宅ローン以外の支出、例えば生活費や教育費はどうすれば良いのでしょうか?
要件を満たせば公的年金から遺族基礎年金や遺族厚生年金が支給されますが、それでも不足する場合、貯蓄・収入のほかに生命保険で手当てすることを考えなければなりません。
もしものときに備えるため、今回は「逓減(ていげん)定期保険」と「収入保障保険」について見ていきましょう。
住宅ローンを抱える子育て世帯の死亡保障は逓減定期保険が望ましい
死亡した人の葬儀費用や相続税納税資金は、いつ死亡しても保険金が支払われる「終身保険」で、一方遺族の生活費や教育費については、契約で定めた期間に死亡した場合に保険金が支払われる「定期保険」で手当てするのが一般的です。
定期保険は終身保険に比べて貯蓄性では劣りますが、その分保険料が安く設定されているのが特徴です。ただし、定期保険の保険金額は見落としがちなので要注意。一定額を支払い続けると、保障が大きくなりすぎることがあるのです。
というのも、世帯主死亡時の必要保障額は一番下の子が誕生したときに最大となり、期間の経過につれて小さくなっていきます。そのため、ずっと同じ金額を支払っているのは無駄であるともいえます。
定期保険の保険金額を契約時から期間の経過につれて減少していく設定にしておけば、遺族にとって過剰になりにくく適正な保障を確保することができます。このような定期保険を、「逓減定期保険」といいます。
【例】
家族構成:夫(40歳)、妻(36歳)、子ども(8歳)、子ども(2歳)
保険目的:夫が死亡した場合の生活費など
保険期間:下の子が大学を卒業するまでの20年
保険金額:生活費などのうち月額15万円(年間180万円)
保険金額が一定の定期保険を契約したとすると、この時点で受け取れる保険金額は15万円×12か月×20年=3,600万円。ただし、1年が経過するごとに必要とする保障額は15万円×12か月=180万円ずつ減少していくため、年々必要保障額よりも大きくなります。もちろん、「必要保障額よりも多いから安心」と捉えることもできますが、支払う保険料が高くなることは理解しておきましょう。
逓減定期保険の場合は保険期間の経過につれて保険金額が減少していくため、支払う保険料を抑えて保障が過剰になりにくくなるように設計できます。
住宅ローンを抱える子育て世帯の死亡保障は、子どもの成長とともに減少していく傾向にあるため、定額型の定期保険よりも逓減型の定期保険が適しているといえるでしょう。
収入保障保険も人気。定額定期保険との支払額の差は約200万円
最近では、被保険者が死亡した場合の保険金を一定期間にわたり年金形式で支払う「収入保障保険」(保険会社によって「家族保障保険」など名称が異なる)も人気です。
収入保障保険は、期間の経過とともに保険金額が減少する点で逓減定期保険と同じです。加えて、保険金が年金形式で支払われる分、逓減定期保険よりもさらに保険料が安いという特徴があります(一時金で受け取ることも選択できますが、年金で受け取るよりも金額は少なくなります)。
先ほど挙げた例において、某保険会社の保険料を試算してみましょう。
・定額定期保険(3,600万円)・保険期間20年・毎月払い
⇒保険料は13,716円
・収入保障保険(月額15万円・最低5年保証)・保険期間20年・毎月払い
⇒保険料は5,055円。
収入保障保険では毎年180万円の保障が少なくなりますが、定額定期保険と比べると月額で8,661円、年間で10万3,932円、20年で207万8,640円も保険料が安くなります。
生命保険を見直し、家計のスリム化と万が一の備えを両立しよう!
万が一の備えは大きい方が安心できますが、日々の家計管理も無視できません。生命保険の見直しは面倒で後回しにしがちですが、生命保険をライフスタイルにあった形にリフォームすることで家計のスリム化を目指し、備えも万全にしておきましょう。
この記事を書いた人
益山真一
ファイナンシャル・プランナー
「3大資金(住宅・教育・老後)」を効率的に手当てし、ライフプランを実現するための家計管理を提案するファイナンシャル・プランナーとして、セミナー・執筆、相談を展開。仕事の目標は、お客様の「心、体、お金、時間、仕事」のバランスの改善による幸せ実現。セミナーは平成29年10月末時点で累計2,692回を数える。
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