【FP監修】コロナショックで景気に暗雲。住宅ローン金利はどうなる?
全世界に広まり、未だ終息が見えない新型コロナ。政府からの自粛要請に伴い飲食業や観光業を中心に大打撃を受けており、健康被害はもちろん、経済の停滞が深刻です。景況感の悪化が進む中、経済対策の実施が急務ですが、今回のコロナショックで住宅ローン金利はどうなるのか、考察してみます。
住宅ローン金利と景気との関係性
住宅ローンのうち、変動金利や短期固定金利は、短期プライムレートの影響を受けます。短期プライムレートとは、各金融機関が大企業などの優良企業に1年未満の短期融資する場合の最優遇金利のこと。これには政策金利が関わっています。
政策金利は、日本全体の景気状況を見ながら日本銀行が決定します。景況が悪化したときには、市場の通貨を増やすために政策金利を引き下げ、金融機関がお金を借りやすい状況を作り出すのです。低い金利で貸出資金を準備できた金融機関は、企業や個人へ低い金利でお金を貸出できるようになるため、市場の通貨の供給量が増え、景気が上向きになります(行き過ぎるとインフレ状態を招きます)。
つまり、景気が悪くなると、政策金利の引き下げに伴い短期プライムレートが低くなり、変動金利や短期固定金利は下降します。
一方、10年以上の長期固定金利や全期間固定金利は、10年国債利回りを代表的な指標とする長期金利が関係しています。こちらは主に長期的な景気予想により変わります。
変動金利や短期固定金利は目の前の景況に、10年以上の長期固定金利や全期間固定金利は今後の景気の予感に、それぞれ左右されると言っても良いかもしれません。
しばらくは現状と同程度の低水準金利を維持?
経済的な大きなダメージとして記憶に新しいのが2008年のリーマンショックでしょう。アメリカの金融機関の破綻により世界規模の経済危機に見舞われました。今回の考察の参考に、リーマンショック後の「フラット35」の金利の推移を見てみましょう。
※フラット35とは、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供している全期間固定金利の住宅ローンです。
当時の日本はリーマンショック前からさまざまな金融政策を実施し、デフレ脱却を目指していました。そのため、リーマンショック時には住宅ローン金利はすでに低い水準となっていたのです。リーマンショック直後は一時的に金利が上昇したようにも見えますが、その後は多少の上下動しながら徐々に低下しています。
2020年3月の同じ条件のフラット35の金利は0.9%で、ここ数年は1%前後の金利を推移しています。コロナショックで景気の悪い状態が続いたとしても、しばらくは現状と同程度の低水準金利を維持する可能性が高いと思われます。
先行き不透明な時代、ライフプランニングを通じて家計の把握を
たとえコロナショックが収束しても、今後また何かしらの原因で経済が急速に冷え込むことはあるでしょう。そんなときには、住宅ローンを含めた金利の動向に要注意です。
例えば、現在、長期固定金利より変動金利や短期間固定金利の方が低く借り入れができますが、どこかのタイミングで金利が上昇する可能性は否定できません。また、全期間固定金利以外の長期固定金利を選択した場合にも、固定期間終了時の景気状況によっては金利が跳ね上がることもありえるのです。
手元に資金が豊富にあるのであれば、金利が上がって支払額が増加しても十分に対応できますが、そうでなければ、全期間固定金利を選択した方がリスクは少ないと言えます。
先行き不透明な時代に突入した今、常日頃からライフプランニングを通じて家計を把握し、住宅ローンを組む際には無理なく支払っていけるかを十分に検討してから選択するようにしましょう。
この記事を書いた人
佐々木 茂樹
ファイナンシャルプランナー
1968年、北海道旭川市生まれ。地元の公立高校卒業後、ホテルマン、郵便局を経験。郵便局在職中にAFP資格を取得後、生命保険会社へ転職し、ライフプランシミュレーションを軸にした保険提案を実践。主に住宅購入時の保険見直し相談を行ってきたが、顧客の悩みは住宅ローンや資産形成など保険だけでは解決できないことを痛感し、2011年、独立系FP事務所ファイナンシャルサービス株式会社を設立、代表取締役に就任。金融機関に属さないFPとして顧客目線での問題解決、夢の実現のサポートを行っている。
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