早期導入は見送られたものの……「9月入学」のメリット・デメリット
新型コロナウイルスが猛威を振るう最中、にわかに話題に上った「9月入学」。2020年6月時点では来年度の早期導入は見送られたものの、議論自体がなくなったわけではないようです。
なぜ9月入学の議論が巻き起こったのでしょうか?また、今後もし学校の入学や進級が9月になると、社会や家庭にはどのような影響があるのでしょうか?
今回は、9月入学のメリットとデメリットをおさらいしておきましょう。
コロナをきっかけに再燃した「9月入学」とは?
地域によって若干の差はありますが、新型コロナウイルスによる休校期間は約3か月にわたりました。一部の学校ではオンライン授業などが実施されましたが、多くの学校で教育の空白期間が生まれてしまったのです。
そのため、教育の遅れをリセットするために入学・進級をずらす「9月入学」の案が浮上しました。特に、これから受験を控える最終学年の生徒たちの不安を考えれば、こうした案が出てくることはある意味当然のようにも思われます。
緊急事態宣言の対象が全国に広がり、先行きの見えない状況にあった4月28日、全国17県の知事らが9月入学の導入を含めた検討を政府に要請するメッセージを出しました。これを受け、政府も具体的な問題点の整理と検討に着手したのです。
実は、9月入学の議論自体は今に始まったものではありません。欧米諸国や中国をはじめとする世界の国々では、9月ないし秋学期の入学が標準的だからです。
そもそも、欧米式の学制が導入された明治初期には、日本も欧米にならって9月入学制を採用していました。その後、1921年に当時の官公庁の会計年度と合わせるために4月入学へ変更された経緯があります。9月入学を導入する案は、30年以上にわたって度々議論されてきました。
コロナをきっかけにして9月入学の議論が再び注目を集めたわけですが、9月入学への移行には乗り越えなければならない障害が少なくなく、学校現場からも反対の声が上がりました。そして、6月の時点では「今年度や来年度といった直近の導入は現実的ではない」という結論が政府内で固まったのです。
9月入学のメリット・デメリットって?
では、9月入学が導入された際のメリットとデメリットは一体どのようなものなのでしょうか?もう少し詳しく見てみましょう。
【9月入学のメリット】
1. 教育の遅れをリセットできる
現に発生している教育の遅れをリセットできるという短期的なメリットがあります。文部科学省は教育の遅れについて、1年生の内容を2年生に繰り越すなど年度をまたいで調整することも認める通知を出しています。しかし、最終学年については適用できません。学年を9月まで延長して教育の遅れを取り戻すのも一つの考え方でしょう。
2. 世界標準に合わせられる
9月入学という世界標準に合わせることで、例えば、約半年のタイムラグがなくなります。日本から海外へ留学したり、逆に海外からの留学生を受け入れたりすることがよりスムーズにできるようになるといわれています。他にも、受験期間が夏季にずれることで、受験生が冬季の体調管理や交通機関の麻痺といったリスクから解放されることもメリットでしょう。
【9月入学のデメリット】
1. 教育現場の負担増加
現在の仕組みを再編することによる教育現場の負担増が懸念されます。授業の進度や年中行事など、各学校がさまざまな事情を抱える中、短期間での移行は混乱を招く恐れも。加えて、移行期間の5か月分、約1.4倍の人数を抱える学年もあり、教員の不足や保育所・学童保育での待機児童の発生も指摘されています。
2. 社会全体に大きな影響を与える
学校教育の出口の部分を考えると、各種国家試験や採用試験などの仕組みの変更をはじめとして、国の法改正や予算編成にまでに大きな影響が出ることは避けられません。
9月入学の議論を注視しつつも、振り回されすぎないように
デメリットで挙げた問題を軽減するため、数年がかりの段階的な移行案も検討されましたが、いずれも決定的な解決策には至っていません。教育現場や社会に与える影響を考えると、ただでさえコロナの完全終息の目処が立たない中では、早期に9月入学に踏み切るのは難しいのが現状でしょう。
ウィズコロナやアフターコロナの学習環境にどのように対応していくかという目の前の課題で手一杯のところ、9月入学が議論されることで、むしろ不安を募らせた人もいるかもしれません。しかし、長期的な議論はしっかり注視しつつ、気持ちは振り回されすぎないようにして、冷静に日々を過ごしたいものですね。
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