2024年1月1日16時10分頃、石川県能登地方を震源地としたマグニチュード7.6、最大震度7の「令和6年能登半島地震」が発生しました。元旦の祝賀ムードの中、震源地に近い地方では緊急地震速報が鳴り響き、ほどなくして、テレビの画面は新春特番から地震のニュース一色に。東日本大震災以来の大津波警報ということもあり、報道各局では強い口調で津波の危険を繰り返し伝え、そのような非日常の事態に日本中に大きな不安が走りました。
このような災害のニュースの影響で、大人はもちろん、子どもの心が不安定になることはよくあります。もし子どもが不安を感じた場合は、どう対応したら良いのでしょうか。今回は、災害報道に不安を覚える子どもへの接し方を考えてみましょう。
災害報道が子どもに与える悪影響
被害に遭った人の気持ちに寄り添いすぎて、体験していなくても心や身体が疲れてしまう現象を「共感疲労」と呼びます。過去に似た経験がある人や感受性が強い人、使命感が強い人に生じやすいため、注意しましょう。
4〜6歳くらいの年齢は、自我の発達に加えて自分と他人の区別がはっきりし、共感力が伸びてくる時期。就学前の子どもでも「共感疲労」が起きる可能性はあり、「地震報道は、子どもにはわからないだろう」と安易に考えてはいけません。
人間は不快な体験をしたり強いストレスを受けたりすると、心理的な安全を保つために「防衛機制」が働くようになっています。災害報道を見てストレスを感じた子どもは、自分や家族がケガをしてしまうようなイメージを急に抱き、その結果、攻撃的になることもあります。頭痛や腹痛などの不調が出ることも十分ありえるでしょう。
さらに、指しゃぶりや赤ちゃん言葉を使うなどの「赤ちゃん返り」が起こることも少なくありません。また、トイレがうまくできなくなったり、一人で眠れなくなったりすることも。大人は困ってしまうかもしれませんが、あくまでこれは不安感を解消するために起こっている反応なのだと、冷静にとらえるようにしましょう。
ただし、睡眠や食事は人間の最低限の欲求であるため、「寝付きが悪くなった」「夜中に何度も起きるようになった」「食が細くなった」という場合は、早めに医師や専門家に相談することをおすすめします。
度重なる災害報道を目にする子どもに対し、大人が心がけたい5つのこと
もしテレビやSNSなどで見聞きする災害情報が原因で、子どもが以前より不安定な様子になっているようなら、以下のポイントを参考にしてみてください。
1.子どもが触れる災害に関する情報量を制限する
子どもは、成人と比べて、安全・安心への不安を抱きやすい傾向があります。そのうえ、惨事報道の頻回視聴は、ストレス症状を高めることが知られています。
子どもの心がかき乱されていると感じる場合は、年齢と発達に応じて、情報量を大人が管理し、衝撃的な内容が子どもの目に触れないようにしましょう。
2.普段通りの生活を維持する
被災地ではライフラインもままならず寒さに凍えている中、日常生活を送ることに罪悪感が芽生えることはあるかもしれません。しかし、可能な限り普段通りの生活を維持することも、子どもを守るためには必要です。
子どもにとって、慣れ親しんだ場所や活動は、安全で正常であると感じるために不可欠なもの。子どもが不安定な時期は新しい習慣を取り入れることなく、これまでの生活をキープしましょう。
3.できるだけ子どもと一緒に過ごす
「今ここは安心安全なんだよ」という言葉を、温かいスキンシップとともに伝えてあげてください。
子どもがさらなる不安を訴えてきたら「一緒に募金をして、その人たちの力になれることをしよう」など、具体的な体験を通して安心を取り戻すイメージを作ってあげるのも良いでしょう。
4.子どもの反応に寛容に接する
災害報道後に対する子どもたちの反応はさまざまです。例えば、お人形遊びをしながら「地震だ、地震だ!」と人形の家を揺らす「地震ごっこ」を始める子もいるでしょう。大人はつい「不謹慎だから、やめなさい!」と頭ごなしに怒ってしまいがちですが、子どもは思考が未発達な分、気持ちを言葉で表現したり自分の中で区別したりすることができず、ごっこ遊びで感情やストレスを発散しているのです。
このような場合は、無理に止めたりするより「おやつを食べようか」「一緒に本読む?」などと声をかけて、気持ちを切り替えてあげると良いでしょう。不安に感じている子どもの気持ちや変化を受け止め、否定はしないことが重要です。
5.子どもとたくさん話す
子どもは、災害が起こったことの因果関係がわかりません。理解できないまま、根拠のない罪悪感を抱いてしまっていることもありますので、その場合は「これは、あなたのせいではない」ときちんと言葉にしてあげてください。子どもが被災者と自分を過剰に同一化するのを減らせるよう、災害に関する具体的な情報を合わせて伝えましょう。
そして、災害とは関係なく、子どもの好きなことや今日の出来事についても会話しましょう。日常生活について誰かと話すことは、健康に過ごすために欠かせません。ご飯の準備やお出かけの計画をさせるなど、子どもに家庭内での主導権や主体性を持たせることも、子どもの気持ちを前向きにするために有効です。
気持ちがつらいときは災害報道から距離を置いて
言うまでもなく、震災報道を見て事実を知ること、相手の境遇に気持ちを寄せることは、大人にとっても子どもにとっても大切なことです。けれど、こういった衝撃的な出来事にまつわる報道は、たとえ見ているだけでも読者・視聴者の心に知らず知らずのうちに負担をかけてしまいます。ニュースを見て落ち込んでしまうようであれば、一度テレビやスマートフォンなどから離れてみてください。
また、トラウマに対する反応の仕方は、子どもの数だけあります。同じニュースに触れても子どもの反応はすべて違うという前提のもと、子どもの話にしっかり耳を傾けるようにして、それぞれの子どもに合わせた対応を心がけるようにしましょう。
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