最近は「円安」により、食料品などの日用品の多くが値上がりしている状況です。円安が止まらない中、住宅ローンにはどのような影響があるのでしょうか?
今回は、円安時における住宅ローンの選び方や住宅購入の注意点を解説します。
円安で長期固定金利は上昇?住宅ローンへの影響を考察
円安とは、日本円の価値が低くなることで、1ドルと交換する日本円が多く必要となる状況です。
2011年10月には1ドル75円32銭で交換できたのですが、2024年4月の連休中には1ドル160円を超えました。13年ほどで円の価値が半分以下になってしまい、これは1990年4月以来の低水準です。
日本とアメリカの金利差(10年債などの利回りの差)が広がると、円安が進むといわれています。一般的には円安が進むと株価が上昇し、債券価格は下がるため、利回りは上昇。新発10年物国債の利回りは長期金利(1年以上お金を貸し出す際の金利)の代表的な指標となっていますので、利回りが上がる現状では、長期金利も上がっていくことが予想されます。
そして、長期金利に連動する住宅ローンの長期固定金利の上昇にもつながります。
急激な長期金利の上昇は影響が甚大であるため、今後は日銀が国債の買い入れなどで対応するでしょう。ただし、日本の金利が上昇傾向にあり、アメリカとの金利差が縮小したのにも関わらず、円安が続いています。今の円安は、金利差以外の要因が大きいと考えられるため、対策が難しいかもしれません。
なお、変動金利は短期プライムレート(業績の良い優良企業に貸し出す際の最優遇貸出金利のうち1年以内の短期貸出の金利)に連動しています。ちなみに短プラは、短期の政策金利の影響を受けて決定します。
今後、政策金利が上がることで変動金利が上昇する可能性もありますが、短プラは2009年1月以降変わっていないため、すぐに大きな変動はないと予想されます。
円安時の住宅購入の注意点。住宅ローンの選び方や頭金について
今後、長期固定金利の住宅ローンが上昇する可能性を考えると、固定金利での借入を検討しているのであれば、早目に決断すると良いかもしれません。
一方、変動金利においては、現状で短プラの変動が少ないことや、各金融機関が特別金利などで低く抑えていることから、今後も低い水準での推移が予想されます。ただ、変動金利の場合は、借入後に金利が上がる可能性を否定できません。金利が上がったとしても、返済に対応できるだけの余裕資金を準備しておく必要はあるでしょう。
また、以前は住宅ローンを組む際、ある程度の金額を頭金として準備することが推奨されていました。しかし、住宅ローン減税制度(適用要件あり)を利用することで、借入後最大13年間は年末の住宅ローン残高から税控除されるため、必要額すべてを借入するケースも増えています。
頭金にする予定だった余裕資金を運用に回すことで、資金を増やせる可能性もあります。現在は「新NISA制度」を利用することで、利益が出ても税金を気にせずに運用ができるので、おすすめです。
※運用はリスクもありますので、よくご検討ください。
住宅の購入価格は将来的に今以上に上がる可能性も
円安は、住宅ローンの金利だけでなく、住宅の購入価格にも影響が出ています。建材は輸入に頼っている部分が多く、コロナやロシア・ウクライナ戦争の影響もあり、価格が高騰しました。そのうえ、円安で海外の通貨に対する円の価値が下がっているため、購入にはより多くの日本円が必要となり、それらが住宅価格の上昇へとつながっています。
建築資材の価格が今後どのように推移するのか予想するのは難しいですが、将来的に今以上に上がる可能性もありますので、購入したい物件と出会えたなら、良いタイミングだと考えてみてはいかがでしょうか。
住宅ローン返済やその他の負担増にも対応できるよう、しっかりとライフプランニングを行い、対応できる家計を目指しましょう。
この記事を書いた人
佐々木茂樹
ファイナンシャルプランナー
1968年、北海道旭川市生まれ。地元の公立高校卒業後、ホテルマン、郵便局を経験。郵便局在職中にAFP資格を取得後、生命保険会社へ転職し、ライフプランシミュレーションを軸にした保険提案を実践。主に住宅購入時の保険見直し相談を行ってきたが、顧客の悩みは住宅ローンや資産形成など保険だけでは解決できないことを痛感し、2011年、独立系FP事務所ファイナンシャルサービス株式会社を設立、代表取締役に就任。金融機関に属さないFPとして顧客目線での問題解決、夢の実現のサポートを行っている。■HP:http://financial-service.jp/
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