住宅ローン返済者の死亡後の生活を支える制度(2)遺族厚生年金
住宅ローンの団体信用生命保険に加入しておけば、返済する人に万が一のことがあった場合、遺族は住宅ローンの支払いを心配することはありません。しかし、住宅ローン以外の生活費や教育費の不安は残ります。
前回は、遺族の収入として「公的遺族年金」のうち「遺族基礎年金」をご紹介しました。今回は「遺族厚生年金(報酬比例部分)※以下、遺族厚生年金」について解説します。
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住宅ローン返済者の死亡後の生活を支える制度(1)遺族基礎年金
遺族厚生年金の対象範囲と年齢要件
遺族厚生年金が支給されるパターンは以下の2通りです。
・現在、会社員や公務員(厚生年金被保険者)である者が死亡した場合など(以下、パターン1)
・昔、会社員や公務員などであり、今は会社員や公務員でない者で、国民年金の保険料納付済期間などが25年以上ある者が死亡した場合など(以下、パターン2)
上記において、死亡した者に生計を維持されていた遺族(遺族の収入が850万円未満)に支給されます。
なお、遺族厚生年金を受給できる遺族には、優先順位があります。
・第1順位:妻・子・夫
・第2順位:父母
・第3順位:孫
・第4順位:祖父母
遺族基礎年金を受給できる遺族が「子のある配偶者、または子」であるのに比べると、遺族厚生年金の対象範囲は広いですが、死亡した者の兄弟姉妹には支給されません。
また、遺族には以下の年齢要件が設けられています。
・妻には年齢要件はない(ただし、死亡当時、子のない30歳未満の妻への支給は5年限定)
・夫、祖父母は死亡当時に55歳以上(支給開始は60歳から)
(夫が遺族厚生年金を受給できる場合には、60歳未満でも支給される例外あり)
・子や孫は原則18歳到達年度末まで
遺族厚生年金で支給される金額は「ねんきん定期便」で計算できる!
遺族厚生年金で支給される金額は、厚生年金加入期間と加入中の報酬(給与、賞与)などに応じて計算された年金額(報酬比例部分)の4分の3となります。パターン1の場合、厚生年金加入期間が300月未満でも、最低300月分は保証されます。
詳細な解説は省略しますが、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」を見れば、概算額を計算できます。
◆パターン1(現在、厚生年金被保険者である者が死亡した場合など)
(A)50歳未満/厚生年金加入期間300月以上
⇒ねんきん定期便の報酬比例部分の年金額×3/4
(B)50歳未満/厚生年金加入期間300月未満
⇒ねんきん定期便の報酬比例部分の年金額×3/4×300月/加入期間
なお、50歳以上のねんきん定期便に記載されている金額は、現在の加入状況が60歳に達するまで継続する前提の見込額のため、その見込額を割り引いて考える必要があります。
(C)50歳以上/厚生年金加入期間300月以上
⇒ねんきん定期便の報酬比例部分の年金額×3/4-α
(D)50歳以上/厚生年金加入期間300月未満
⇒ねんきん定期便の報酬比例部分の年金額×3/4×300月/加入期間-α
◆パターン2(昔、会社員や公務員などであり、今は会社員や公務員でない者が、国民年金の保険料納付済期間などが25年以上ある者が死亡した場合など)
基本的な計算式はパターン1と同じですが、厚生年金加入期間が300月未満である場合の300月分の最低保証はなく、実際の加入月数で計算されます。
・50歳未満
⇒ねんきん定期便の報酬比例部分の年金額×3/4
・50歳以上
⇒ねんきん定期便の報酬比例部分の年金額×3/4-α
(今後も自営業であれば「-α」はない)
遺族厚生年金は「生活費の足し」程度。生命保険や投資の検討をしましょう
実際に遺族厚生年金を計算してみると、生活費として決して十分ではないことがわかります。例えば、加入中の平均給与が35万円(平均年収420万円、加入月数300月未満)の場合、遺族厚生年金の金額は年額で約43万円、月額約3.6万円。遺族厚生年金は「生活費の足し」程度に考えておいた方が良いでしょう。
万が一の生活資金の備えとして、遺族厚生年金の支給額を把握しておくことは大切です。そのうえで、どのようにして生活費を手当てするのか、生命保険や投資などを検討するようにしてください。
この記事を書いた人
益山真一
ファイナンシャル・プランナー
「3大資金(住宅・教育・老後)」を効率的に手当てし、ライフプランを実現するための家計管理を提案するファイナンシャル・プランナーとして、セミナー・執筆、相談を展開。仕事の目標は、お客様の「心、体、お金、時間、仕事」のバランスの改善による幸せ実現。セミナーは平成29年9月末時点で累計2,675回を数える。
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