住宅ローン返済者の死亡後の生活を支える制度(1)遺族基礎年金
住宅ローンを借り入れる際に団体信用生命保険に加入すると、返済する人に万一のことがあったとしても、遺族は住宅ローンの支払いを心配することなく、その後の生活を営むことができます。しかし、住宅ローン以外の生活費や教育費について不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
遺族の収入として、第一に把握しておきたいのが「公的遺族年金」です。今回は、国民年金に加入する人が死亡したときに支給される「遺族基礎年金」について解説します。
遺族基礎年金≒「高校卒業までの子どもの教育費」??
遺族基礎年金は、保険料納付要件を満たす国民年金に加入する者などに生計を維持されていた「子のある配偶者または子」に支給されます。
「保険料納付要件」はいくつかありますが、直近1年間に国民年金(または厚生年金)の保険料の滞納がなければ、要件を満たしていると考えて良いでしょう。ただし、子どもがいない場合、遺族基礎年金は支給されません。遺族基礎年金は「子どもの教育費を手当てするために支給される年金」と考えましょう。
公的年金において「子」とは原則「18歳到達年度末までの未婚の子」のことをいい、一番下の子が18歳到達年度末(一般に高校卒業)に達するまで支給され、金額は18歳到達年度末までの子の数によって異なります。
例えば夫の死亡当時、子が3人いる場合。上の子が高校を卒業するまでは「子が3人」、真ん中の子が高校を卒業するまでは「子が2人」、下の子が高校卒業するまでは「子が1人」として計算され、年金が支給されます。
支給金額のシミュレーション
◆子のある配偶者が受給する場合の遺族基礎年金(平成29年度価額)
・子1人
年額:1,003,600円(基本額779,300円+加算額224,300円)
月額(子1人あたり):約83,633円
・子2人
年額:1,227,900円(基本額779,300円+加算額224,300円×2)
月額(子1人あたり):約51,162円
・子3人
年額:1,302,700円(基本額779,300円+加算額224,300円×2+74,800円)
月額(子1人あたり):約36,186円
公立学校・私立でかかる費用例。公立なら遺族基礎年金で手当て可能?
遺族基礎年金の年金額を子1人あたりの月額で考えると上記の通りです。
ところで、文部科学省の子どもの学習費調査(平成26年)によれば、学校教育費、学校給食費、学校外活動費を合計した金額はこのようになっています。
◆公立
・幼稚園:年額222,264円、月額約18,522円
・小学校:年額321,708円、月額約26,809円
・中学校:年額481,841円、月額約40,153円
・高 校:年額409,979円、月額約34,164円
◆私立
・幼稚園:年額 498,008円、月額約 41,500円
・小学校:年額1,535,789円、月額約127,982円
・中学校:年額1,338,623円、月額約111,551円
・高 校:年額995,295円、月額約 82,941円
遺族基礎年金の月額と学習費の月額を比べると、公立では、子どもの数にかかわらず、遺族基礎年金でほぼ手当てできそうです。
しかし、私立では、幼稚園を除き、子どもが1人であっても遺族基礎年金だけで学習費を手当てするのは難しいといえます。小学校、中学校は義務教育課程のため、公立に転校するという選択もありますが、不足する教育資金については遺族の収入や貯蓄、生命保険などで補う必要が生じます。
子どもの教育プランを踏まえ、生命保険を見直そう
住宅ローンを借り入れたことをきっかけに、生命保険を見直す家庭は少なくありません。
その際は、子どもの教育プランを踏まえ、万が一のときの遺族基礎年金の支給額を把握したうえで、見直しを検討するようにしましょう。
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この記事を書いた人
益山真一
ファイナンシャル・プランナー
「3大資金(住宅・教育・老後)」を効率的に手当てし、ライフプランを実現するための家計管理を提案するファイナンシャル・プランナーとして、セミナー・執筆、相談を展開。仕事の目標は、お客様の「心、体、お金、時間、仕事」のバランスの改善による幸せ実現。セミナーは平成29年9月末時点で累計2,675回を数える。
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