近年、小中一貫教育を導入する市町村が全国的に増えています。文部科学省からも、小中一貫教育の実施に関する手引書が出され、この動きは本格的に広がる予兆が。そこで今回は、小中一貫教育で教育がどう変わるのか、そのメリットなどをご紹介します。
そもそも小中一貫教育とは
1.小中一貫教育の概要
小中一貫教育は、小学校1年生から中学校3年生までの9年間を通して一貫したカリキュラムを実施するというもの。
2.具体的な制度
小中一貫教育には、大きく分けて2種類があります。
ひとつは、小学校と中学校が完全に一体化した「義務教育学校」、もうひとつは既存の小学校・中学校の枠組みは残しながらも一貫した教育を行う「小中一貫型小学校・中学校」です。後者は、「併設型小学校・中学校」と「連携型小学校・中学校」に分けられます。
義務教育学校
ひとつの教職員組織・ひとりの校長が配属された、修業年限を9年とする新たな学校種です。前期課程を6年、後期課程を3年としています。
小中一貫型小学校・中学校
組織上は独立した小学校と中学校が一貫した教育を実施する形態です。小学校・中学校それぞれに教職員組織・校長が存在します。また、小中一貫型小学校・中学校は、以下の2種類に分類されます。
[併設型小学校・中学校]
設置者が同じで独立したA中学校・B小学校・C小学校が一貫教育を行います。
[連携型小学校・中学校]
設置者が異なるそれぞれ独立したA中学校・B小学校が一貫教育を行います。
小中一貫教育が求められる理由・メリット
従来は小学校の6年間+中学校の3年間という枠組みの元に行われてきた義務教育ですが、小中一貫型教育の導入によって、その在り方は大きく変わろうとしています。このような改革が求められた背景には、以下のような理由があげられます。
1.時代の変化とともに、義務教育も変革の時を迎えている
平成18年に教育基本法が改正され、「各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養う」という義務教育の目的が示されました。高度情報化社会・グローバル化・少子化などといった時代の変化に伴って、義務教育にも変革の時が訪れたのです。
2.小学校と中学校の連携不足の解消を目指して
従来の義務教育制度下では、小学校と中学校の連携不足による弊害が少なからず生じていました。例えば、「小学校低学年の教員は、子どもたちが中学にあがってからの姿をイメージしながら日々の教育を行えているのか」「中学校の教員は、子どもたちが小学校のどの段階で何を学んで何につまずいているのかを知ったうえで教育を行えているのか」といった疑問がありました。これらの問いに向き合い、義務教育をより一層意味あるものにするために、小中一貫教育という体系が求められるようになったのです。
3.学習内容の量的・質的充実のため
平成20年に改定された学習指導要領では、教科によって標準授業時数を実質1割程度増加し、教育内容の量と質を充実させることが定められました。これを受け、小学校・中学校の教育現場では、よりきめ細やかで、長期的な視点に立った教育が求められるようになっています。
4.子どもの身体的・精神的発達の早期化にあわせて
小学校を6年・中学を3年というくくりは、昭和20年代に制定されたもの。しかし、現代の子どもの身体的成長は、当時よりもかなり早期化しています。例えば、女子の平均初潮年齢は、2年ほど若年化。身体的成長が早期化したことで、子どもたちの精神的な発達も早くなっています。
このようなことから、既存の枠組みを見直し、子どもの成長段階によりマッチした教育体制を整える必要性が高まっています。
5.いわゆる中1ギャップの解消のため
「小学校では成績が良かったのに、中学に入ってから急に勉強についていけなくなった」ということはよくあります。これが、いわゆる「中1ギャップ」と呼ばれるもの。中学校への進学によって新しい環境での学習や生活に不適応を起こしてしまう子どもはとても多いのです。
この「中1ギャップ」を解消することも、小中一貫型教育の目的のひとつです。
大切なのはお子様・ご家庭にあった学校の選択
ご紹介したように、様々な社会的背景やメリットを考慮したうえで推進されている小中一貫教育。しかし、小中一貫教育が最良の選択だと盲信するのは間違いです。大切なのは、側にいるお子様や家庭に合った学校を選んであげること。
例えば、お子様の負担になるほど遠方の小中一貫校に行かせたり、家計を圧迫するような小中一貫の私立校に入学させたりすることは、あまり良い選択ではないかもしれません。
もちろん小中一貫教育にはたくさんの良い点があるので、いろいろな選択肢を見たうえで、お子様やご家庭が笑顔で義務教育期間を過ごせるような学校選びをしてくださいね。
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