【FP監修】住宅ローンの「親子リレー」とは?要件やメリット・デメリットを解説!
住宅ローンは1人で組まないといけないものではありません。今では、夫婦で契約する「ペアローン」も定着してきました。
そんな中、「親子リレー」といって親子で住宅ローンを組む方法もあります。
今回は、住宅ローンの親子リレーに着目し、そのメリットとデメリットを見ていきましょう。
住宅ローンの「親子リレー」とは?
親子リレーとは、一定の条件を満たす者を後継者として、2世代で返済する制度です。具体的には、親がメインの住宅ローン債務者となって先に返済を行い、後にその子(もしくは孫)や配偶者などが引き継いで支払うことができます。
住宅資金供給を支援する独立行政機関「住宅金融支援機構」が提供する「フラット35」でも親子リレーを利用できますが、返済の後継者になるには以下の要件をすべて満たさなければなりません。
1.申込者の子・孫などまたはその配偶者で定期的に収入がある方
2.申込時の年齢が満70歳未満の方
3.連帯債務者になる方(1名のみ)
※これら以外に住宅ローン自体の要件があります。
なお、金融機関によっては購入物件に居住する必要があり、多くは住宅ローンの支払いの割合に応じて住宅の共有持ち分の割合を決めて登記します。
※フラット35では居住は要件に入っておらず、共有持ち分の割合は任意です。
注意したい親子リレーのメリット・デメリット
親子リレーの最大のメリットは後継者の年齢をもとに借入期間を算出するため、借入期間を長くできることです。
一般的に住宅ローンの借入開始と完済する年齢が金融機関ごとに設定されています。例えば上記のフラット35では、借入できる年齢は70歳まで、完済時年齢は80歳です。
そのため、親に返済能力があったとしても年齢的に住宅ローンの借入が難しいケースがありますが、親子リレー返済を選択すればその問題はクリアできるでしょう。
そのほかのメリットとしては
1.収入を合わせて借入可能なので、借入可能額が増える
2.住宅ローン控除が親子それぞれ利用できる
などが考えられます。
しかし一方で、デメリットもあります。
1.すでに住宅ローンを組んでいる状態のため、後継者が別のローンを考えたときのハードルが高くなる
2.親が亡くなったとき、親の持ち分は相続対象となる
若い世代である子や孫は、親子リレーを組んだ後に結婚や子どもの誕生・転勤・転職など、人生の転機が訪れる可能性があります。その際、住宅ローンがあることで、他の住宅購入の妨げや、転居しにくい状況になることも否定できません。
また、親が亡くなったときには、親の持ち分が相続財産となるために相続税の対象に。他の財産も含めた金額によっては課税されます。さらに、他に相続人がいると、一緒に親子リレーを組んだ子がすんなりと相続できない恐れもあります。
親が資金援助したいなら「住宅資金贈与の非課税の特例」の活用を
もし、親が子の住宅購入への資金援助の意味合いで親子リレーを考えているのなら、相続税などの心配がない「住宅資金贈与の非課税の特例」を活用してみてはいかがでしょうか。
住宅資金贈与の非課税の特例とは、親が子や孫などの直系尊属に居住用の住宅の取得や増改築の費用を援助する際、要件を満たすと一定金額まで非課税となる制度です。
消費税率が10%で購入する場合、令和3年4月1日~令和3年12月31日までは700万円まで非課税となります(省エネ等住宅の場合には1,200万円)。
※参照:国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm
親からの贈与を受けて購入した住居は、もちろん子の所有にできますので、相続時に財産分与の対象になることはありません。
※子で登記をした場合
複数人で住宅ローンを組む場合は、リスクを考慮して検討しよう
その他、親子リレーでは団信(団体信用生命保険)についても検討が必要です。それぞれ金融機関によって扱いが異なりますが、親と後継者のどちらか一方しか加入できないケースもあります。親が団信に加入したとすると、子にもしものことがあった場合には、この後に支払予定の住宅ローンはそのまま残ります。
反対に、子が団信に加入し、親にもしものことがあったら、親の残債がそのまま子の負担となるため、支払いがキャパオーバーになるかもしれません。
連帯保証なども含め、複数人で住宅ローンを組む場合には、さまざまなリスクがあることを考慮した上で検討するようにしましょう。
この記事を書いた人
佐々木茂樹
ファイナンシャルプランナー
1968年、北海道旭川市生まれ。地元の公立高校卒業後、ホテルマン、郵便局を経験。郵便局在職中にAFP資格を取得後、生命保険会社へ転職し、ライフプランシミュレーションを軸にした保険提案を実践。主に住宅購入時の保険見直し相談を行ってきたが、顧客の悩みは住宅ローンや資産形成など保険だけでは解決できないことを痛感し、2011年、独立系FP事務所ファイナンシャルサービス株式会社を設立、代表取締役に就任。金融機関に属さないFPとして顧客目線での問題解決、夢の実現のサポートを行っている。■HP:http://financial-service.jp/
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