政府の調査によると、10歳以上の小学生の平均就寝時刻は21時57分、平均起床時刻は6時38分でした。この2つのデータを差し引くと、小学4〜6年生の一般的な睡眠時間は約8時間40分ということに。
小学生の理想の睡眠時間は9〜11時間といわれていますので、現代の日本には、睡眠不足の小学生が多くいることがわかります。また、この睡眠不足の傾向は、近年さらに加速しているそうです。
今回は、睡眠不足が小学生に与える影響と、その原因と対策について考えてみましょう。
※出典:「平成27年度版 子供・若者白書」(内閣府)
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h27honpen/b1_06_01.html
睡眠が子どもにとって大切なワケ。睡眠不足が引き起こす悪影響とは?
睡眠は、大きく3つの役割を持っています。
1.記憶を整理する
睡眠は、眠りの浅い「レム睡眠」と眠りの深い「ノンレム睡眠」という質の異なる2つの眠りで構成されています。レム睡眠の間、脳は活発に働いていて、情報の削除や固定といった、いわゆる「記憶の整理」を行います。「テスト前は、夜ふかしするよりも早く寝たほうが良い」といわれるのは、このためです。
2.脳や心身を休ませる
記憶の整理が行われるレム睡眠とは対照的に、ノンレム睡眠の間、大脳は休息しています。特に長時間の運動や勉強をしていなくても、1日の終わりには脳や心身には疲労が溜まっているももの。ノンレム睡眠は心身回復にとても重要です。
3.脳や心身を発達させる
睡眠中は、脳から成長ホルモンが分泌されます。この成長ホルモンは、子どもの脳の機能を正常に働かせるために欠かせません。骨や筋肉などの身体の発達にも不可欠な物質です。
では、これらの役割を持つ睡眠が不足したらどうなるでしょうか。眠気からくる集中力の低下はもちろん、休息不足から脳の機能低下を招いてしまう危険性があります。論理的思考ができなくなったり、記憶力が下がったり、感情が抑制できずにイライラしたりしてしまうのです。
さらに、成長ホルモン不足による低身長、運動意欲の低下から肥満などの可能性も出てくるでしょう。「たかが睡眠」と、侮ってはいけないのです。
どうして睡眠不足になるの?考えられる原因
子どもの睡眠不足は、さまざまな生活習慣が原因と考えられています。
・塾など放課後の習い事が忙しい
・TVや動画を見続けてしまう
・ゲームに夢中になってしまう
・親の帰宅が遅いため、それに伴い宿題やお風呂が遅くなる
また、このような生活習慣とは別に、発達障害や睡眠障害、不眠症などの病気が原因で、子どもがスムーズに眠りにつけない場合もあります。「なかなか寝付けない」「夜中に何度も起きる」といった症状が、年齢が上がっても一向に改善されない場合は、小児科や心療内科などの医療機関の受診をおすすめします。
いずれにしても、子どもの頃の睡眠不足は、成人になってからの生活習慣病や心の病気につながりやすい傾向にあります。子どもに夜更かしの習慣がある場合は、家族間で早めに協力して対策を取ることが必要です。
今日から取り入れたい小学生の夜更かし対策8選
1.平日も休日も同じ時間に寝起きする
睡眠のリズムを整えるには、就寝時間と起床時間を決めるようにしましょう。休日だからといって寝溜めをしてしまうと、体内リズムのズレが生じ、時差ボケのような状態になってしまいます。
2.朝、日光を浴びる
人間の身体は、朝日を浴びてから14時間後に眠くなるようにできています。毎朝、同じ時間に起きてカーテンを開けて朝日を浴びることは、体内リズムを作る上で有効です。
3.朝ごはんを食べる
夜のスムーズな寝入りは、朝の良い目覚めとリンクしています。1日のスタートに大切な朝ごはんを食べることで体温が上がり、よく噛むことで心と身体を目覚めさせることができます。
4.昼間にしっかり身体を動かす
体温を下げて眠りを誘う働きのあるホルモン「メラトニン」は、昼間にたくさん活動することによって、日没後たっぷり合成されます。昼間しっかり活動することで夜深く眠ることができるのは、そのためです。
5.昼寝は20分以内にとどめる
人間の身体は毎日一定のリズムで生活できるようになっているため、長い昼寝をとってしまうと、このリズムが乱れてしまいます。どうしても眠い場合は、短い昼寝をさっと取りましょう。
6.寝る直前のお風呂を避ける
人間は、体温が下がることで眠くなる性質があるので、寝る直前に熱いお風呂に入ると、体幹の温度が上がって眠れなくなってしまいます。同様の理由で、眠る前の激しいエクササイズもNG。夜は、ストレッチなどの軽い運動にとどめましょう。
ただ、手足が冷えて寝付けないというときには、手足の先を温めることは効果的です。実は人間は、手足の先から放熱することにより体幹の温度を下げているため、手足が冷たいままだと、身体の熱がうまく逃げず寝付けません。軽くストレッチしたり、蒸しタオルを当てたりして、末端の血管を開いてあげると眠りやすくなるでしょう。
7.眠る前は強い光を避ける
眠る1時間前は、できるだけ強い光を避けましょう。テレビ、タブレット、スマホなどから出るブルーライトは、メラトニン分泌を抑制してしまいます。
同様に、昼白色や昼光色のライトは勉強や読書には向いていますが、眠る前に浴びると脳が覚醒します。可能であれば、寝る直前は温かみがある電球色に変えるか、光の段階調節を使って光を弱くしましょう。
8.入眠の儀式を作る
入眠の儀式とは「これをしたら寝る」という習慣のこと。家族間で「おやすみ」と挨拶を交わすだけでも良いのですが、入眠の儀式を「親子の時間」とすれば、より高い効果が期待できます。「一緒にホットミルクを飲む」「軽く体操をする」「本を読む」「布団の中で1日を振り返る」など、ほんの10分でも親子のひとときを持てれば、子どもの心は満たされ、眠りにつきやすくなるでしょう。「寝ること=楽しいこと」と思ってもらえれば大成功です。
睡眠は、子どもの身体と心の両方を育てる。家族で見直そう!
ご紹介した夜更かし対策は、周囲の協力なしには改善しにくいものばかり。「ゲームは何時までにする」「宿題はいつする」など、どのようにすれば睡眠時間を確保できるのか、家族で話し合ってルールを決めると良いでしょう。
「寝る子は育つ」という言葉がありますが、睡眠が育てるのは、子どもの身体だけではありません。身体と心の両方を育てるのです。
良い眠りを守る秘訣は、子どもでも大人でも同様の効果が期待できます。家族の健康を守るプロジェクトとして、今一度、睡眠の大切さを見つめ直しましょう。
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