運動機能の低下で思いもよらぬケガも。深刻な「子どもロコモ」の原因と対策
「ロコモティブシンドローム(通称「ロコモ」)」という言葉を聞いたことがありますか?これは、運動器障害のために立ったり歩いたりする身体能力が低下した状態を表す言葉です。
そんなロコモが、最近は子どもたちにも広がっています。医師らは、加齢や病気などが原因の大人のロコモと区別して「子どもロコモ」と呼んでいます。
今回は、深刻化する子どもロコモについて原因と対策を見ていきましょう。
子どもロコモが増えている原因はスマホ?
基礎疾患がないのに運動の基本的な動作ができない「子どもロコモ」の子どもたちは、バランス能力や柔軟性が低下しているのが特徴です。倒立といった運動が苦手なのはもちろん、「和式トイレが使えない」「朝礼で立っていられない」など、日常生活に影響するようなケースも報告されています。
さらに、身体活動の減少によって筋肉・骨・関節などが弱くなり、それに伴いケガが重症化しているケースも。廊下の雑巾がけの際に手で支えられず前歯を折ってしまったり、跳び箱に手をついただけで両手首を骨折したりすると聞けば、単なる運動不足では片付けられない状況になりつつあることがわかります。
子どもたちの身体に異変が起きている原因のひとつは姿勢の悪さであり、スマホやタブレットの長時間の使用が要因だと考えられています。子どもの頭部は3~4㎏ほどの重さですが、首を15度ずつ前傾するたびに負担が倍増。仮に60度の角度で下を向きながらタブレットを見ていると、5倍の20㎏ほどの負担が首にかかってしまうのです。今は小学校の授業でもタブレットを使用する時代であり、子どもの姿勢は留意すべき問題といえるでしょう。
また近年は、公園でのボール遊びが禁止されるなど、子どもが安全に外遊びできる場所が減ってきました。その代わりに画面を見つめる時間が長くなり、発達段階に相応の体力や遊びの中で自然に身につく柔軟性が育ちにくくなっています。それに追い打ちをかけたのが、新型コロナウィルスによる外出自粛。出歩けなくなったことで、身体を動かす機会が圧倒的に減ってしまい、子どもロコモが増加したと考えられています。
子どもロコモの状態から運動機能が改善されないまま大人になってしまうと、将来的にロコモになる可能性が高くなります。ただ、子どもロコモの場合は、ストレッチや体操などの適切な運動を続けるほか、身体の姿勢を見直すなどするだけで、大幅な改善が見込まれます。子どもロコモに気がついたのであれば、日常生活を見直すことから始めましょう。
子どもロコモをチェック。家庭でできる子どもロコモの対策のポイント
まずは、子どもがロコモかどうかをチェックしましょう。以下の5つの項目を試してみて下さい。
1.片足立ち(バランス感覚)
右足、左足とも、5秒以上ずつふらつかずに片足立ちができるかどうか。
2.しゃがみこみ(下半身の柔軟性)
途中で止まらず、しっかりとしゃがみこめるかどうか。かかとが浮いたり、倒れたりしていないか。
3.両手上げ(上半身の柔軟性)
両手をまっすぐ上げることができるかどうか。腕は耳の後ろ側までいくか。
4.身体の前屈(上半身・体感・ハムストリングスの柔軟性)
膝を伸ばしたまま、指を床につけることができるかどうか。ひざは曲がっていないか。
5.グーパー動作(上肢の動的機能)
グーで肘を引き、パーで腕を前に出す動作をスムーズに行うことができるかかどうか。パーのときはしっかりと手首を反らせることができるか。
ひとつでもできないものがあれば、子どもロコモの疑いがあります。埼玉県で行われた調査では、ひとつ以上当てはまった子どもが4割を超えたという報告もあり、できないことは決して珍しくないのが現状です。
では、子どもロコモは、どのようにすれば改善するのでしょうか。第一に姿勢を良くして、肩甲骨と股関節や手足と指の関節を動かす体操を続けましょう。1日に数分でもいいので、毎日続けることが、子どもロコモの予防・改善につながります。
・姿勢を正す
ずっとスマホやタブレットを見て座っていると、あごを前に突き出し、猫背の状態になってしまいます。このような姿勢を正すには、後ろから腰部をグッと前に押して、骨盤を立てるようにすることが大切です。良い姿勢を日々心がけることで、だんだんと正しい形が身につきます。
・肩甲骨と股関節を動かす
手を頭の後ろで組み、足を肩幅に開きます。息を吸いながら腕を後ろへ、息を吐きながら前に戻し、肩甲骨を動かします。続いて、大きく伸びの運動です。背伸びをして身体を大きく前に倒します。背中が丸まらないように気を付けましょう。
そして、スクワット。手を前に突き出し、肩甲骨を伸ばすようにして腰を下ろします。このとき、足の親指が浮かないよう注意が必要です。
・手足と指の関節を動かす
運動に欠かせない手足の指の柔軟性アップのためには、前述の「グーパー動作」や、足指でタオルを手繰り寄せる「タオルギャザー」、「足指じゃんけん」がおすすめです。
これらは一例ですが、あまり難しく考えずに、親子で楽しく身体を動かすようにしてみましょう。身体をねじったり、のばしたり、反らしたりすることを意識して、逆立ち、手押し車、押し相撲、幅跳び、匍匐前進、スキップ、馬跳びなど、さまざまな動きを取り入れてみてください。子どもが「楽しい!」と思う時間を作れば、自然と毎日続けやすくなります。
小さい頃から運動する習慣を身につけさせ、生涯にわたるロコモ予防を!
子どもの運動機能を改善するポイントは「姿勢の良さ」「肩関節と股関節の柔軟性」「手足と指の関節のやわらかさ」の3点です。まだ子どものうちにこれらを改善しておくことは、健康でケガの少ない生活を送ることができると同時に、大人のロコモ予防になります。
小さい頃によく運動した世代は年をとってから身体を動かすことが苦になりにくく、若いときに運動をしていないと高齢者になってからはより動きづらくなるといわれています。健康な体は一生の宝物。それを手に入れさせるためにも、子どものうちから動くのを当たり前にして、運動ができる身体を作っていくことが肝心といえるでしょう。
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