節約してマンション管理費等をやりくりしよう(2)医療費控除
2017年8月に公的医療保険制度が改正され、70歳以上の一般所得者の医療費について、高額療養費の自己負担限度額が引き上げられました。そして、2018年8月には、一般所得者及び現役並み所得者の自己負担限度額がさらに引き上げられます。
つまり今後は医療費の負担が重くなることが予想されます。だからこそ、医療費負担をカバーする制度を上手に活用したいもの。その制度のひとつが「医療費控除」です。
今回は、以前からある医療費控除に加え、2017年から始まった「セルフメディケーション税制」についても解説します。
従来の控除は10万円超の医療費が対象。場合によっては管理費数か月分に相当
医療費控除は、所得税・住民税における所得控除です。本人及び生計を同一にする配偶者や親族にかかる医療費を支払った場合に適用を受けることができ、所得金額から「支払医療費-保険金等-総所得金額等×5%(最高10万円)」が差し引かれ、年間200万円まで控除できます。
一般的に「年間10万円超の医療費を支払った場合に適用できる」として知られており、所得税の確定申告をすると、自動的に住民税でも控除されます。
例えば、年間医療費が30万円、所得税・住民税の税率が20%の人の場合、医療費控除額は(30万円-10万円)×20%=4万円。これは、管理費の数か月分に相当します。
なお、夫婦が共働きである場合や、親子ともに収入がある場合などは、最も所得が多い人がまとめて適用を受けると、戻ってくる税金も多くなります。
ポイントになるのが対象となる医療費。医師による診療、治療の対価のほか、薬局で購入する頭痛薬や風邪薬、出産費用、電車やバスなどの公共交通機関を利用した通院費、保険が適用できない先進医療費など、幅広く適用できます。
一方、ビタミン剤などの健康増進や疾病予防のための購入費用、マイカーを利用した通院費などは適用できません。人間ドックや健康診断の費用は、疾病が発見され引き続き治療をした場合は対象となりますが、異常なしの場合には適用されません。
交通費などをメモで残しておいたり、薬局で購入したレシートは必ず自宅に持ち帰って決まった場所に保管したり、家族でルールを作り、実行することをおすすめします。
医療費が少額でも適用できる新制度「セルフメディケーション税制」も
ただ、「年間10万円も医療費はかからない」という家庭もあるでしょう。忙しくて病院に行く暇がない人に知っていただきたいのが、2017年から始まった「セルフメディケーション税制」。
健康の保持増進や疾病の予防に取り組む人(例:インフルエンザの予防接種、会社や自治体が行う健康診断など)が、年間1.2万円を超える「スイッチOTC医薬品」を購入した場合、年間8.8万円を上限として所得金額から差し引くことができます。
つまり、年間10万円(8.8万円+1.2万円)までの医薬品購入費が対象。10万円以上の医薬品を購入し、所得税・住民税の税率が20%である場合、節税効果は1.76万円とあまり大きくはありませんが、管理費1か月分は浮くかもしれません。
注意したいのが対象となる医薬品。薬局に置いている薬なら何でも良いわけではありません。対象となる医薬品の箱などには、下のマークが印刷されています。
※本マークは、一般社団法人 日本OTC医薬品情報研究会 の登録商標です。
この税制を利用したい人は、このマークの付いている医薬品を購入し、領収証を自宅に持ち帰り保管することをルール化しましょう。また、従来の医療費控除と同時に適用できない点にも注意が必要です。
マンションの管理費など毎月のコスト負担を軽減するためにも医療費控除の活用を
年齢を重ねるにつれて医療を受ける頻度も増えますし、生涯付き合う病気やケガを抱える可能性も否定できません。
医療費控除は確定申告が必要な分、面倒や手間はありますが、年間で2万円の節税となる場合、30年では60万円。年間で5万円の節税となる場合、30年では150万円となります。
マンションの管理費など毎月発生するコスト負担を軽減するためにも、医療費控除を上手に活用してください。
この記事を書いた人
益山真一
ファイナンシャル・プランナー
「3大資金(住宅・教育・老後)」を効率的に手当てし、ライフプランを実現するための家計管理を提案するファイナンシャル・プランナーとして、セミナー・執筆、相談を展開。仕事の目標は、お客様の「心、体、お金、時間、仕事」のバランスの改善による幸せ実現。セミナーは平成29年7月末時点で累計2,643回を数える。
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