現在、経済産業省が進めている教育計画のひとつに、「未来の教室」というものがあります。
「未来の教室」とは、教育とテクノロジーを融合させた「EdTech/エドテック」を用いた学びのシステム。IoT(インターネット・オブ・シングス ※1)やAI (人工知能) が急速に発達しつつある現代社会の新しい教育のあり方として大きな注目を集めています。
今回は、この取り組みの具体的な内容や目的についてご紹介します。また、「未来の教室」がこれからの子どもの教育にどのような影響を与えるのか考えていきましょう。
※1 あらゆるモノがインターネットに接続され、制御・管理されるシステム
テクノロジーで子どもの学習をより探究的なものに。「未来の教室」とは?
「未来の教室」は、経済産業省が2018年からスタートさせた新たな学びの社会システムです。経済産業省では近年、これからの社会で活躍できる人材育成を目指し、現代社会のあり方にフィットしたさまざまな学習プログラムの開発と実証を進めています。「未来の教室」もそのひとつ。「未来の教室」では、教育(Education)と技術(Technology)をかけ合わせた「EdTech」というプログラムが用いられます。
なお、「未来の教室」という名前から、「学校の授業のひとつ?」と思われる方が多いかもしれませんが、「未来の教室」は学校で実施されるプログラムだけを指しているわけではありません。「未来の教室」はもっと広義な意味での教育システムであり、民間企業やNPO団体などを含めたあらゆる教育サービスが連携することを目標としています。
そのため、「未来の教室」には、子ども向けの知育アプリや、小中学生向けの学習サポートサービス・オンライン講義・社会人向けの英会話やプログラミング学習などが含まれています。
新しい時代に新しい学びのシステムを。「未来の教室✕EdTech」が目指すところ
今の時代を形容する言葉はたくさんあります。よく言われるのは、「第4次産業革命」「高度情報化社会」「グローバル社会」など。また、「AIの進化が人間の仕事を変える」「IoTが生活様式を変える」という過去の予測が、急速に現実化しつつあります。
そのような時代の変化のなかで、これからの未来を担う子どもたちに求められているのは、テクノロジーに使われるのではなく、テクノロジーを使いこなす力。もっといえば、複雑化・高度化する社会で「生き抜く力」です。
そこで、その具体的な策として立ち上げられたのが、EdTechや「未来の教室」だといえます。経済産業省では、以下の要素を「未来の教室」のラフスケッチとして掲げています。
①幼児期から「50センチ革命×越境×試行錯誤」を始める
②誰もが、どんな環境でも、「ワクワク」(遊び、不思議、社会課題、一流、先端)に出会える
③学習者が「自分に最適な、世界水準のプログラム」と「自分に合う先生」を幅広く選べる
④探究プロジェクト(STEAM(S))で文理融合の知を使い、社会課題や身近な課題の解決を試行錯誤する
⑤常識・ルール・通説・教科書の記述等への「挑戦」を、(失敗も含めて)「学び」と呼ぶようになる
⑥教科学習は個別最適化され、「もっと短時間で効果的な学び方」が可能になる
⑦「学力」「教科」「学年」「時間数」「単位」「卒業」等の概念は希釈化され、学びの自由度が増す
⑧「先生」の役割は多様化する(教える先生、教えずに「思考の補助線」を引く先生、寄り添う先生)
⑨EdTechが「教室を科学」し、教室は「学びの生産性」をカイゼンするClass Labになる
⑩社会とシームレスな「小さな学校」に(民間教育・先端研究・企業/NPOと協働、企業CSR/CSVが集中)
経済産業省 未来の教室ポータルサイトより引用
https://www.learning-innovation.go.jp/torikumi/
「未来の教室✕EdTech」でこれからの教育はどう変わるのか
1. 経済産業省の参入により、教育はより開けた場に
これまで、小中学校を始めとする教育分野は文部科学省などの管轄にありました。そのため、学校教育とテクノロジー分野(特に民間企業などが運用するアプリやサービスなど)を融合させたシステムは普及させにくく、学校教育は学校教育だけで独立して存在しているような状況がありました。
しかし、経済産業省が教育分野に参入したことにより、学校教育と社会システムをシームレスに、学校という枠組みを超えたもっと大きな形での教育システムが実現しやすい土壌ができつつあります。
実際、「未来の教室」では、2018年5月から段階的に、「未来の教室」の創出を目的としたサービスやプログラム事業を行う民間事業者の募集を行っています。
2. 学校教育✕未来の教室で、必要な力をより効率よく活発に学べるように
こういった動きにより、今後、教育の場は学校の教室だけではなくなっていくことが予想されます。学校教育を学びの主軸としながらも、インターネットを介した民間企業が運営する教育サービスが強力な学びの副材料となっていくでしょう。
小中学生・高校生のお子さんがいるご家庭では、ぜひこういったサービスやコンテンツにアンテナを張り、お子さんの学びたい欲や興味・関心ある分野を伸ばせる教育環境をつくってあげてください。
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